部下指導や組織を率いて業務改善を果たすヒントがこのレポートにあります

人材育成における集合研修の効果を考察すると

改めて“帰属意識”を考えてみたら・・
意外に重要だった経営の“距離”感
組織の“恩恵”に従業員が鈍感な理由

今月の経営マネジメントレポートの趣旨とポイント

 今月のマネジメント・レポートは、《総務的発想の新戦略経営シリーズ》第19話として、“従業員の帰属意識”を、従来とは少し違う角度からとり上げました。

 一生懸命に従業員を育てて、やっと一人前になったら、会社を辞めると言い出した・・、という話をしばしば耳にします。

 そして、そんな話を聞くと、従業員の育成に“重い”ものを感じてしまうかも知れません。

 しかし、そこには“時計の振子”のように、右左に大きく揺れ動く問題がありそうなのです。

 そして、それを知っていると、それだけで“重苦しい気分”も解消されるかも知れません。

 そんな“考え方”や“視点”の1つとして、本レポートをご用意いたしました。

 当レポートの内容が、御社マネジメントに少しでもお役に立てば幸いです。

 “距離”感というのは、経営者が講師となる《社内研修》のように、中小企業でよく知る仲間で照れるような場も敢えて持つという意味です。

 社内研修のような“形式”は、それに留まれば役には立ちませんが、心のリハビリに活用するなら、こんなに役立つものはないとも言えそうなのです。

 以下に少し補足しておきます。

自力で仕事をする従業員ほど帰属意識が低い:補足1

 アメリカ流の実力主義や成果主義を持ち込んだ“組織”では、当然“アメリカ流のマイナス要因”も輸入してしまいがちです。

 その要因とは、従業員の帰属意識が薄れてしまうということに他なりません。

 仕事を任せ、その成果に応じて給与を支払うという“社内個人事業主”的な仕事の進め方は、従業員に『他でもやれる』という自信を付けさせるばかりではなく、自分はこんなところでこんなことをしていて良いのかという不安も植え付ける傾向があります。

 私たちは、他者に指導されている時より、“自分流”に生きる時の方が“不安に弱い”のです。

 アメリカの労働者が、『もっと有利な職場に移る必要はないのか』という強迫観念にも似た心境に陥るのは、野心があるからというより、“自分流”では強い自信が持てないという“心の問題”を反映しているのかも知れません。

従業員の錯覚:補足2

 知人が以前、ある実験をしたことがあります。

 それは、社内で従業員の誕生日を祝う際、ただ“プレゼントをあげる”のと“皆が集まってお祝いを言う”のとの効果差測定です。

 もちろん、学術論文にできるほど十分な実験では無かったようでしたが、結論として、たとえ数分でも皆が手を止めて誕生日を迎えた人に拍手をすることの方が、管理者が皆を代表してプレゼントをあげるより、当人の印象に残るものだと理解しました。

 当然ではありますが・・・。

 同様に、どんなに困った時や相談時に心を砕いて指導をしても、社内研修をする管理者の方が、指導に熱心だと思われる傾向があるのです。

 困った現実ですが、マネジメントに携わる限り、無視できないことだと思います。

 従業員の“錯覚”という言葉には、本来、こうした意味が込められています。

今月のメッセージ

 仕事を“任せ”なければ、従業員はなかなか一人前にはなりません。

 しかし“任せ”過ぎて、従業員が『自分のカだけで仕事をしている』と感じ始めると、今度は“帰属意識”が乏しくなります。

 この“一人前にする”ことと、“帰属意識を持たせる”ことは、昔から“時計の振子”のように、右へ左へ大きくプレる傾向があります。

 そして今“任せ”にプレ過ぎていることに注意が必要なのです。


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