常陸風土記の丘では、茅葺き屋根の技術と作品を後世に残すために茅葺き職人の育成に取り組んでいます。

石岡市(旧八郷町)の茅葺き屋根の密度は日本一

 石岡市全体では、茅葺き屋根が約100棟を超える民家が現存しています。石岡市郊外の農村エリアの旧八郷町は昔ながらの茅葺き屋根が約70棟残っています。今も生活が営まれている現役の民家です。 この茅葺き屋根の数は全国でも指折りで、市町村の茅葺き屋根の面積密度は日本一です。

石岡市(旧八郷町)の茅葺き屋根の密度は日本一

常陸風土記の丘の茅葺技術者育成事業

 常陸風土記の丘では、茅葺き職人の減少や茅葺き屋根の技術・作品を後世に残すために茅葺技術者育成事業を始めました。地元に職人が残っているうちに、次の世代の技術者を養成することで技術の継承を促す.収入が安定しなかったり、材料の確保・保管など個人では中々解決できない問題を、石岡市と風土記の丘の組織的な働きで軽減していこうと言う試みでした。

常陸風土記の丘では、茅葺き職人の減少や茅葺き屋根の技術・作品を後世に残すために茅葺技術者育成事業を始めました。

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常陸風土記の丘は、茅葺き職人の減少や茅葺き屋根の技術、作品を後世に残すために茅葺技術者育成事業を行っております。

次代を担う常陸風土記の丘の2人の茅葺職人

渡辺 大 氏

常陸風土記の丘の茅葺職人渡辺大です。

 筑波流と呼ばれるこの地域独特の茅葺き技術を継承するため、平成工8年より茅葺技術者育成事業を行い、職員として採用された当時25歳だった渡辺氏。 2014年現在33歳で、常陸風土記の丘施設内の屋根のほか、地域の民家や寺社などの茅葺き現場で、年間を通して活躍しています。 「講師の廣山さんに教えて頂きながら、ひとつひとつ作業を覚えていきました。廣山さんのような職人になれるよう日々勉強です。」


岡野 量平 氏

常陸風土記の丘の茅葺職人岡野量平です。

 茅葺技術者育成事業の3年目に突入した岡野氏。 伝統文化継承のため、常陸風土記の丘の職員として茅葺職人を目指しています。「講師の廣山さんと渡辺さんの作業がスムーズで早いので、遅れないように作業しています。また、屋根ごとに葺き方が違うので、それを覚えるのが大変です。」

茅葺講師の廣山氏は茅葺職人でただ一人の卓越技能者

広山美佐雄さんは、厚生労働大臣より卓越した技術を持つものとして『卓越技能者(現代の名工)』に認定された日本でただ一人だけの職人です。

 常陸風土記の丘の茅葺講師である廣山美佐雄氏は、24歳の時に屋根に上がり始め,現在御年80歳。そのキャリアは50年以上に達します。平成24年には、厚生労働大臣より卓越した技術を持つものとして『卓越技能者(現代の名工)』に認定されました。 茅葺職人として卓越技能者に認定されているのは、日本でただ一人だけです。

「昔は茅や竹などの材料を牛で運び、泊りがけで茅葺き屋根の修繕にあたりました。今は、茅葺き職人の数もかなり少なくなってしまいました。次の世代に茅葺の技術が伝えられればと思い、茅葺技術者育成事業の講師を受けました。屋根の形状によって、全く工程や施工方法が違うので今でも苦労の連続です。」

茅葺屋根の動画

茅葺屋根を側面から支える酒井氏

常陸風土記の丘の茅葺職人を側面から支える酒井氏です。

 材料の調達や工期の予定を組んだりと風土記の丘の茅葺屋根事業を支える酒井芳次氏。

 「常陸風土記の丘では、茅葺き職人の減少や茅葺き屋根の技術・作品を後世に残すために茅葺技術者育成を始めましたが、最初は手探り状態でした。しかし、廣山さんの指導のもと2人の職員を育てることができました。廣山さんには本当に感謝しております。」


「茅葺屋根修繕や貼り替えの準備で大変なことは、材料の調達です。茅などの材料は自然のものなので当然採れる時期や量が限られます。材料を揃えるのに2年を費やす場合もありますので、長いスパンでの計画が大事になります。」

豊後荘病院のシンボルとなっている茅葺屋根の再築

 今回撮影させて頂いた石岡市(旧八郷町)にある豊後荘病院の茅葺屋根による東屋は約40年前に当地が運動場として利用された時にトイレとして併設されたものです。その後、老朽化による屋根の損傷が想定外に酷く、当初は解体撤去も検討しましたが、7層構成の「筑波流とうしもの」の茅葺は重要文化財級の価値ある建物であるとの評価を得て再築することに決定しました。

 なお、工事は高度な技術と信頼性のある石岡市産業文化事業団に依頼し、柱、梁等の躯体は病院所有山林の檜材等を活用しております。

これまでの豊後荘病院の長い伝統と経験を基に、医療や福祉のあり方を皆様のために 実践できる病院を・・・これが私の夢でした。 その夢が、かたちとなって実現いたしました 。 豊後荘病院敷地内の茅葺き屋根を葺き替えします。

常陸風土記の丘の概要

項目内容
会社名財団法人 石岡市産業文化事業団 常陸風土記の丘
連絡先TEL : 0299-23-3888
FAX: 0299-23-7173
所在地茨城県石岡市染谷1646番地
開園時間3月~10月 午前9時~午後5時
11月~2月 午前9時~午後4時
定休日毎週月曜日(月曜日が祝祭日の時はその翌日)
年末年始(12月28日~1月2日)
入園料
(一部の有料エリア)
こども(6歳以上16歳未満) 150円
おとな(16歳以上) 310円

アクセスマップ

茨城県石岡市染谷1646番地

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取材編集者からの後記

茅葺屋根の葺き替えは10年から15年

 茅葺屋根の茅き替えは、昔は25年前後といわれていましたが、かまどや囲炉裏の煙が消えた現代は屋根の寿命が縮み、10年から15年で葺き替え時期を迎えるそうです。耐用年数が15年とはいえ5年から10年は毎年のように差し茅(痛んだ箇所に茅を差し込んで塞ぐこと)や葺き替えをしているようです。


茅葺屋根の技術と作品を後世に残したいという強い思い

 今回、取材させていただいた常陸風土記の丘の職員さんや広山さんの口から共通して出てきた言葉は『茅葺屋根の技術と作品を後世に残したい』でした。毎年12月につくば市で行う茅刈りには、ボランティアの方が参加して茅葺き民家の見学会や交流会を行っています。その茅刈りに今年は廣山氏・酒井氏・渡辺氏・岡野氏の4人がボランティアとして参加したそうです。
 日本の由緒ある正しい農村の景観を残すために、茅葺屋根職人の技術はなくてはならないものだと今回の取材を通して強く感じました。

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