室町時代からの伝統の技が光ります。

「枡儀団扇店」は四代目圷総子により室町時代からの伝統を守るべく雪村うちわの制作に取り組みます。

雪村うちわとは

 常陸太田に伝わる雪村うちわは、室町時代の画僧・雪村がうちわに墨絵を描いて檀家に配ったのが始まりと言われています。竹から作るうちわは全て手作りで和紙は常陸大宮市の西ノ内和紙を用いて、絵柄には雪村ゆかりの図柄のほか、水戸八景などがあります。


 徳川光圀は、このうちわの生産を奨励し、自身も愛用したといいます。明治期には東京方面まで販路を伸ばしましたが戦後、扇風機やクーラーなどの電化製品の普及により需要は減少しましたが、今もなお伝統を守り常陸太田市の地で雪村うちわを作り続けています。

枡儀団扇店の由来

 雪村うちわは室町時代、太田山吹の里に庵住した佐竹氏の一族で画僧・雪村が創作にかかり常陸太田市の近傍沢山耕山寺に寓居し絵をたしなみその生かしたものが伝承され、い草であみ西の内和紙を張りそれに野趣満々の画を描きました。その伝法そのままにその妙味を生かし200年以上続く枡儀団扇店四代目圷総子(号 雪田)により日本情緒豊かな民芸うちわとして今に継承します。

この道80年の圷さん。明日の作業まで頭に入っています。

雪村うちわの制作工程

 雪村うちわの制作工程をご紹介します。(各リンクより該当個所へ移動します。)

1.伐採

 毎年、11月下旬ごろに竹を切りに行きます。竹は常陸太田市内の真竹を使い、若い竹だと柔らかいため、3~4年経った竹を吟味して切ります。

2.荒割り

 輪切りにした竹にしるしをつけてのこぎりで切っていきます。

うちわの材料となる真竹です。3~4年経った竹を用いて良い竹を吟味して選びます。そして、9等分にして竹を切ってきます。

3.肉取り

 あらかじめ、節のところで竹の肉を削っても止まるようにノコギリの刃を入れておき、骨の部分になる竹の肉を削っていきます。

【動画】本体の肉取りは丁寧な作業を心掛けます

4.刃入れ

 骨を作るために竹の上部に垂直に刃を入れていき手で骨を開けるようにします。

骨を広げるために上部に刃を入れていきます。

5.骨しぼり

 骨を開かせるために手で竹を曲げながら骨を絞っていきます。

骨となる部分を手で折り曲げながら、骨を広げられるようにします。

6.節への穴あけ・柄の仕上げ

 横手をつけるためにドリルを使って節の部分に穴を開け、柄の部分をきれいに磨きます。

7.横手挿し

 節に開けた穴に横手を挿します。

節に骨の支えとなる横手と呼ばれる竹を挿していきます。

8.窓づくり

 横手を挿したら、い草で編んでいき扇のように広げていきます。

【動画】い草で編んでうちわの形に整形します

9.紙貼り・乾燥

 絵柄が描かれた西ノ内和紙をうちわに張っていきます。張り終えたら、室内でうちわを自然乾燥させます。

10.型抜・へり張り

 飛び出ている骨をうちわの外周に沿って切り落としていきます。切り落としたへりの部分を和紙で丁寧に張り合わせていき完成となります。

伝統の絵柄の和紙が映えています。

なぜ、天日干しが必要なのか

 天日干しすると水分が飛ぶため、団扇が軽くなります。また、水分が残っているとカビが出てしまうため、自然乾燥させます。

 骨は8ヶ月間毎日天日干しをしていきます。天気予報を必ず見て雲行きを見ながら雨に当てないようにしていかなければならないのでよく天気には気をつけていますと圷さん。

8か月以上竹を天日干しします。そうすることで水分が抜けて丈夫で長持ちする竹になります。

雪村うちわを作るための道具

 ノコギリで竹を割っていったり、小刀で竹の肉を削ったりします。細かい作業をするにつれて小さい道具に代えていきます。おじいさんのころから使っている明治時代の鍛冶屋さんに打ってもらった道具を今でも愛用しています。

明治時代から続く道具を受け継いでいます。

雪村うちわの特徴

四角いうちわ

丈夫で長持ち、そして、軽い

 四角いのは創始者の雪村が作っていた頃から続く形で、涼を求めるために風をいっぱいに受けことができるようにということで四角いうちわができました。

 耐久性は20年以上です。それは買ってくれたお客さんから20年以上使っていますという声を頂いています。

 8か月以上天日干しして乾燥させているので竹が丈夫になりとても軽いうちわです。

雪村うちわの商品案内

 小さいサイズは3種類、大きいサイズは20種類あります。

 雪村は馬の絵が得意で、よく描かれていたそうです。

 水戸八景は特に人気のある絵柄です。

水戸八景のうちの一つ、仙湖暮雪(せんこのぼせつ)

水戸八景のうちの一つ、青柳夜雨(あおやぎのやう)

仙湖暮雪(せんこのぼせつ)

青柳夜雨(あおやぎのやう)

水戸八景のうちの一つ、山寺晩鐘(やまでらのばんしょう)

水戸八景のうちの一つ、太田落雁(おおたのらくがん)

山寺晩鐘(やまでらのばんしょう)

太田落雁(おおたのらくがん)

水戸八景のうちの一つ、巌船夕照(いわふねのゆうしょう)

水戸八景のうちの一つ、広浦秋月(ひろうらのしゅうげつ)

巌船夕照(いわふねのゆうしょう)

広浦秋月(ひろうらのしゅうげつ)

水戸八景のうちの一つ、村松晴嵐(むらまつのせいらん)

水戸八景のうちの一つ、水門帰帆(みなとのきはん)

村松晴嵐(むらまつのせいらん)

水門帰帆(みなとのきはん)

雪村が描くのが得意だった親子馬

水戸の偕楽園を一望できる好文亭

親子馬

好文亭

枡儀団扇店の概要

項目内容
店舗名枡儀団扇店(ますぎうちわてん)
代表者圷 総子(あくつ ふさこ)
所在地茨城県常陸太田市塙町2274
連絡先TEL・FAX:0294-72-7159

アクセスマップ

枡儀団扇店:茨城県常陸太田市塙町2274

サブコンテンツ

取材編集者からの後記

 2月で93歳を迎える圷さん。お父様のもとでうちわづくりを覚えてこの道80年の大ベテランの方です。ひいおじい様の代から続いており昔の作り方を伝承し200年以上の歴史を持ちます。


 この80年間制作に携われてこられて嬉しかったことはと尋ねるとうちわを買いに来てくれたお客さんが何年たっても年賀状を出してくれたり、また買いに来てくれて色々な方とお話ができることがなにより嬉しいことですと圷さん。



これからの新しい取組として若者向けに手に取ってもらいたいカラフルな団扇を用意しています。

 また、これからは色とりどりのうちわを作って若い方にも手に取ってもらえるようなうちわ作りをしていきたいとまだまだ制作への情熱をお持ちでいらっしゃいます。



 このご年齢で毎日元気にうちわの制作に励まれている圷さん。そんなお元気な圷さんから私もパワーをもらいました。これからも伝統を継続してお元気で雪村うちわを作り続けていってほしいと願うばかりです。

このページの先頭へ