甲子園準優勝物語

53回大会昭和46年8月17日決勝桐蔭学園戦

 甲子園で準優勝した昭和46年の試合を振り返ります。試合展開から、当時の激闘が伺えます。

対 日大一(東京)

今大会ナンバーワン左腕を見事に攻略

日大一

 くじ運良く2回戦からとなった磐城の対戦相手は優勝候補の日大一。日大一保坂は快速球と低目のカーブで三振を奪い、磐城田村は得意のシュート、カーブをコースに投げ分け、打たせて取る柔軟なピッチング。強打の日大一打線をいかに抑え、保坂から点を奪えるか、が焦点だった。
 両チーム無得点で迎えた3回。7番若尾、8番野村が連続三振を喫したが、9番岡田が四球、1番先崎が三遊間を破り、2死から一、二塁のチャンスをつくった。2番宗像がボールにくらいつき、一・二塁間を破って先制点をもぎ取った。
 貴重な1点をもらった田村は、コーナーを巧みに突く丁寧なピッチングで焦る日大一打線をほんろうし、6回、7回のピンチも冷静に切り抜けた。8回、9回も3人で抑え、5安打完封で見事に金星をあげた。
 試合前、スポーツ紙では話題にも上らなかった磐城だが、翌日の記事では、東の横綱日大一を綿密に調べ上げた旺盛な研究と工夫の賜物だった、と各スポーツ紙が磐城の大殊勲をほめ讃えた。須永監督の作戦の勝利であり、全員が総力を集中した体当たりの結果でもあった。

対 静岡学園(静岡)

鮮やかな速攻で本県初の準決勝進出

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初回、磐城は1 番先崎がいきなり左翼手頭上を越える三塁打で出塁すると、初戦に続き、またも宗像が三遊間へ殊勲の適時打で先制。さらに阿部の犠打から田村の三遊間安打で宗像が生還して1 点を追加し、わずか16 球で2 点をあげた。
 静岡学園竹内も2回以降は立ち直り、磐城田村との投手戦となったが、9回、阿部、舟木、松崎の3安打で1死満塁。さらに遊撃エラーで1点を追加し、試合を決定づけた。
 磐城田村はコーナーを突く巧みなピッチングで静岡学園打線を5安打完封。6回以降は一人も塁に出さなかった。徹底した左投手対策をたてた磐城の作戦がこの日も見事に成功し、先制点をあげたことが大きな勝因であった。準決勝進出を決めた瞬間、磐城応援団は総立ちとなり、拍手が鳴りやまなかった。

対 郡山(奈良)

小さな大投手の一球一球に観衆酔う

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 前半は郡山ペース。郡山打線は毎回安打を放つが、試合ごとに力を増す磐城田村は、絶妙なコントロールと頭脳的な投球で要所をしめ、点を与えない。
 一方、磐城打線は、郡山川畑の下手から繰り出される大きなカーブに手こずっていたが、5回、7番若尾が中堅越え三塁打で攻撃の口火を切った。無死三塁となり、郡山バッテリーはスクイズを警戒して再三、牽制する。ここで磐城は強攻策。8番野村が左中間二塁打を放ち、磐城が先制した。
 さらに9番岡田、1番先崎が歩いて満塁のチャンスをつくると、2番宗像がスクイズを決め、1点を追加。バントするかと思えば強打、強打かと思えばバントの多彩な攻撃で相手をほんろう。この回を境に試合の流れは一気に磐城に傾いた。
 そして8回、この回先頭の3番松崎が右前打で出塁すると、4番田村の犠打で二進。5番阿部の内野安打で1死一・三塁から6番舟木のスクイズで1点。さらに若尾の左前タイムリーで1点を加え、4-0とリードを広げた。この後も田村は制球よく郡山打線を抑え、見事3試合連続完封で、決勝進出を決めた。

対 桐蔭学園(神奈川)

再三の好機に1本出ず、大旗に届かず

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 これまで無失点の磐城・田村、4試合を2失点に抑えてきた桐蔭学園・大塚の両投手による注目の決勝。期待通りの緊迫した投手戦となった。
 磐城は初回、四球の先崎が二盗し、宗像の犠打で三進する。しかし、主軸が打ち取られ、先制機を逃す。以降、3、4、5、7回と得点圏に走者を進めるが、桐蔭・大塚の度胸満点のピッチングと捕手・土屋の巧みなリードの前にあと一本が出ない。
 流れは桐蔭に傾きつつあった。7回、桐蔭の攻撃。1死からの土屋の打球は右中間を抜ける。三塁に気迫あふれるヘッドスライディング。2死から峰尾の左中間三塁打で土屋が弾けるようにホームを駆け抜け、貴重な1点をもぎとった。
 終盤、磐城は粘りを見せ、同点機をつくりだした。必死にボールに食らいついたが、ことごとく桐蔭バッテリーにフライを打たされた。9回も2死三塁まで攻め立てたが、阿部の飛球が捕手・土屋のミットに収まり、ゲームセットとなった。
 好投手を支える堅実な守備で名勝負を演じた両校の選手にスタンドからは大きな拍手が贈られた。

2010年02月24日

カテゴリー:磐城高校野球部球史

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